研究会・イベントのご報告 詳細
「日本の中小企業における航空宇宙部品産業への発展戦略」
| 主催:(一財)機械振興協会経済研究所 第498回機振協セミナー「日本の中小企業における航空宇宙部品産業への発展戦略」オンデマンド配信あり | |
|---|---|
| 開催日時 | 2026年6月19日(金)13:30~15:00 |
| 場所 | WEBシステムにより開催(Zoom) |
| テーマ | 「日本の中小企業における航空宇宙部品産業への発展戦略」 |
| 講師 | 講師:成城大学 社会イノベーション学部 教授 (一財)機械振興協会経済研究所 特任フェロー 山本 匡毅 氏 モデレータ:(一財)機械振興協会経済研究所 研究主幹 山元 哲史 |
| 内容 |
2026年6月19日(金)にWebシステムより、第498回機振協セミナー「日本の中小企業における航空宇宙部品産業への発展戦略」を開催しました。講師は、成城大学社会イノベーション学部教授兼一般財団法人機械振興協会特任フェローの山本匡毅氏にお願いしました。なお、モデレーターは、一般財団法人機械振興協会経済研究所の山元哲史が務めました。当日は、約113名にオンラインでご参加いただきました。ご参加いただきました皆様に、厚く御礼申し上げます。【講演内容】本講演では、機械振興協会経済研究所で実施した研究プロジェクトの成果をもとに、日本の中小企業が航空宇宙部品産業へどのように参入し、取引を拡大していくべきかが論じられた。講演ではまず、航空機産業と宇宙産業は同じ「航空宇宙」と括られがちであるものの、求められる品質や商流、取引慣行が大きく異なることが示された。そのうえで、両産業の構造を正確に理解し、自社の技術や経営資源に応じて狙う市場を見極めることが、発展戦略の出発点であると強調された。航空機産業については、民間航空機が安全性を絶対条件とする産業であり、品質管理や検査体制が極めて厳格であることが説明された。日本では機体メーカーやエンジンメーカーのプライム企業が少なく、多くの企業はTier2以下のサプライヤーとして参入する構造にある。その一方で、コロナ禍後の需要回復を背景に、主要機種の生産は増産局面にあり、受注残も厚いことから、中長期的な需要をある程度見通しやすい市場であることが示された。とりわけ日本企業は歴史的にボーイング向けとの結び付きが強く、今後の生産動向を読むうえでも、海外プライムメーカーの計画を把握することが重要であると述べられた。 参入の要件としては、JISQ9100を中心とする品質マネジメント認証の重要性が取り上げられた。JISQ9100はISO9001を基礎としつつ、航空宇宙産業向けの要求事項を加えたものであり、取引の入口として大きな意味を持つ。一方、特殊工程(熱処理、表面処理など)や非破壊検査では、さらにNadcap(National Aerospace and Defense Contractors Accreditation Program:国際的なサプライヤーに求められる公認工程認証プログラム)の取得が必要となる場合が多く、取得費用や維持費、英語による審査対応まで含めた負担は小さくないことも指摘された。認証は取得自体が目的ではなく、どの工程を担い、どの顧客を狙うのかという戦略と結び付けて考えるべきものとして位置付けられた。 また、航空機部品の取引慣行は、この20年で大きく変化してきたことが紹介された。かつては重工メーカーが工程ごとに外注先を振り分ける「ノコギリ型」の発注が一般的であったが、量産化とコスト低減の要請を背景に、現在はTier2企業が窓口となって複数工程を束ねる一貫生産方式へと移行しつつある。この変化は、中小企業にとって単なる加工受託だけではなく、材料調達や工程管理、非破壊検査を含めて全体を管理できる能力が重要になってきたことを意味する。今後は、Tier3以下の下請けにとどまるのではなく、より上位のTierで受注できる体制を整えることが利益率の面でも重要になると整理された。 地域展開の事例としては、群馬県と石川県の企業が紹介された。群馬県では、自動車産業などで培った加工基盤を背景に、県の支援策や展示会出展支援、重工メーカーOBによる助言などを活用しながら、県内企業がJISQ9100を取得したことが報告された。事例企業では、自社で認証を取得したうえで発注側の困り事に対応し、航空部品の受注につなげていた。石川県の事例では、鋳物から機械加工、熱処理、材料評価試験まで手掛ける企業が、早期にJISQ9100を取得し、さらにNadcapも導入することで、海外企業との直接取引を拡大してきた経緯が示された。ここでは、海外エアショーへの出展、大手商事会社のOBを営業顧問に活用したこと、営業に対する外国人人材の活用などが、グローバルサプライヤー化を支える要因として紹介された。 宇宙産業については、政府予算の拡大や安全保障上の重要性の高まりを背景に、国内市場が変化しつつあることが述べられた。従来の日本では、宇宙部品の主要な発注先はJAXAであり、研究開発色が強く、極めて高い品質が重視されてきた。しかし近年は、打上げや衛星ビジネスの民間移行が進み、三菱重工業、IHIエアロスペース、大手電機メーカーに加え、宇宙ベンチャーが新たな発注主体として存在感を高めている。宇宙部品では、航空機とは異なり、一定の品質を満たしつつコストを抑えることがより強く求められる場合があり、発注先によって要求水準や商談の進め方が異なることも説明された。 宇宙分野の具体例としては、山口県の航空宇宙クラスターと山梨県の企業事例が取り上げられた。山口県では、県内企業がクラスターを形成し、全社がJISQ9100取得を前提に参画しながら、国内外の展示会へ継続的に出展してきた。その結果、宇宙ベンチャー案件や大学との共同開発案件、小型人工衛星やロケット関連部品の加工受注へとつなげており、案件ごとに窓口企業を定めて得意技術を持ち寄る仕組みが機能していることが示された。山梨県のワイヤーハーネスの企業では、インコネルの加工セミナーに参加し、大手重工メーカーと出会い、他部署への紹介をしていただいたことで、航空部品に参入することができた。また、宇宙部品では、ベンチャーや大手メーカーから衛星・ロケット関連部品を受注しており、展示会や名刺交換が新規取引の起点となること、また作業環境や人材配置を専用化して品質要求に応えていることが紹介された。 講演のまとめとして、日本の中小企業にとって重要なのは、航空機部品と宇宙部品を一括りにせず、それぞれの産業特性に応じて受注戦略を設計することであると整理された。航空機分野では、世界的なイベントに経営が左右されやすいことから、「両利き経営」の実践や一括生産体制、海外取引の拡大が鍵となる。他方、宇宙分野は、宇宙ベンチャーの増加により参入余地が広がっており、認証が不要であることも多いことが特徴であり、取引先の企業との積極的なコミュニケーションや財務状況の見極めが重要となる。いずれの分野でも、展示会や商談会への出展や参加は直ちに受注につながらなくとも、将来の取引に繋がる重要な機会と情報を得る場であることから、情報感度を高めて継続的に接点を築く必要があると締めくくられた。 講演後は質疑応答が行われ、航空部品における東アジアの競争状況に関する質問のほか、脱炭素化や電動化分野における日本企業の競争力、エアバスの事故や昨今の国際情勢の変化による樹脂離れが進んでいるかどうかに関して議論がなされ、盛況裏に終了した。 ※解像度は画面右下の[360P]をクリックして高画質等にご調整ください。 このセミナーの資料はこちら↓からご覧になれます。 【セミナー資料】 |















